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プーチンに打つ手なし。ホテル宿泊者が徴兵事務所へ連行されるロシアの窮状

プーチン大統領が一方的に併合を宣言した自国領を、鮮やかな反転攻勢で次々と奪還するウクライナ。ロシア軍は各地で壊滅的な被害を受け、弱体化に歯止めがかからない状態となっています。窮地に追い込まれたプーチン氏の「暴発」はあり得るのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、刻々と変化するウクライナ紛争の戦況を解説。さらにこのまま停戦協議が開始されない場合に起こりうる、日本も当事者となる「最悪の展開」を予測しています。

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ウクライナ全土にインフラ破壊のミサイル攻撃で孤立を深めたプーチン

プーチンは、クリミア大橋攻撃への報復として、ウクライナ全土にインフラ破壊のミサイル攻撃をした。しかし、その結果は世界からの孤立化を深めた。今後を検討しよう。

ウ軍は、ルハンスク州で交通の要衝のスバトボに向かっているし、ヘルソン州では、ベリスラウを奪還して、ムイロベに向かっている。これに対して、ロ軍は部分動員兵を短期の訓練で前線に投入している。

クレミンナ・スバトボ攻防戦

ウ軍は、クレミンナ周辺に到達して、クレミンナのロ軍基地に対して、砲撃しているが、突入はしないでいる。どうも、スターリンクの範囲外になっているので、友軍識別が難しいので、スターリンクの設定変更を待っているようだ。

しかし、イーロン・マスク氏も年間コストが1億ドルになり、これ以上の提供はできないと述べ始めて、米軍負担とするように交渉中とのことだが、当分はサービスを無料で提供するという。

ウ軍は、もう1つ、クピャンスクからP07を南下してスバトボに向けて前進しているが、P07の正面に、ロ軍は、塹壕を作り、ウ軍の攻撃に備えようとしたが、P66からスバトボに向かうウ軍に挟まれて、塹壕にいるロ軍は撤退した。

ウ軍は、P66上のフルシフカ、クロフマリネ、ベレストーブを奪還して、P66とP07の高速道路の接合領域を奪還した。これで残すは、スバトボになり、それへの攻撃準備になっている。

このスバトボ防衛に、ロ軍は、大量の動員兵を配備させているようであり、少し形勢が不利になると、ロ軍動員兵は降伏するし、上官が反対すると、上官を殺して降伏した部隊もあるという。

しかし、南部ロ軍は、リマンからの敗残兵を集めて、体制を立て直すことができたようであるが、弾薬も戦車も足りず攻撃能力がなくなり、守備を固めるしかないようだ。

クレミンナ方向へもウ軍は攻撃しているが、今は激しい砲撃を行っているようである。まずはロ軍の火砲を無力化するようである。

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南部ヘルソン州・クリミア

ロ軍は、ムイロベとプラスキンズキーを結んだ線上に塹壕を掘り、防衛線を構築した。しかし、ウ軍は前進して、ベリスラウを奪還し、ムイロベへ攻撃中で、次にカホフカ橋の袂の街ベゼルに向けて進むことになる。

しかし、ウ軍が奪還したイシチェンカをロ軍が攻撃しているというように、ここのロ軍は手ごわい。ウ軍も精鋭部隊で対応しているが、まだ、状況は予断を許さない。

ロ軍は、カホフカ橋の袂の街ベゼルに要塞を作り、カホフカ橋を渡り撤退できるように最後の拠点を整備した。

それと、ウ軍は、南部ヘルソン州とザポリージャ州の対空ミサイルS300の全部を破壊したようであり、特にトクマクのS300を無効化したことで、この地域でのウ軍航空機の活動ができるようになった。このため、1日20回程度も攻撃機がロ軍陣地を空爆している。

ロ軍の劣勢状況から、ヘルソン州の親ロシア派は「これからウクライナ側との戦いが本格化する」として住民に退避を呼びかけている。ウ軍も冬になる前にはヘルソンを奪還すると述べている。

クリミアとロシアを結ぶケルチ大橋が破壊され、プーチンは怒り、ウクライナ全土に対して、ミサイル攻撃をした。10日はミサイル84発打ち、43発をウ軍は撃墜したし、11日は30発打ち、21発を撃墜したが、各地で爆発が起こった。それもインフラ設備を狙った攻撃である。世界各国からロシア非難の声が起きている。

この攻撃を防止するために、急遽、欧米など多くの国から対空ミサイルの供与が急ぐことになった。ロ軍の無差別攻撃を完全に防ぐ必要がある。

欧米が供与する対空ミサイルは、モスクワを攻撃できるものもある。勿論、弾薬が少ないので、大きな損害を出せないが、届くものが提供されることは大きい。

一方、ロシアは精密誘導ミサイルの2/3を使い、残り609発しかないとレズニコフ国防省は述べている。

このため、プーチンは、ウクライナ各地への大規模なミサイル攻撃について、当面は行わないとする一方、ウクライナへの軍事支援を続けるNATOに対して「分別のない行動に踏み切らないことを願っている」と主張し、強くけん制した。精密ミサイル枯渇と、ウ軍に対する対空ミサイルの供与や特に中距離以上のミサイルの供与を抑えたいようである。モスクワを射程範囲にできるミサイルを恐れている。

そして、原因のケルチ大橋の破壊で、片側一車線は使えるが、トラックの走行はできず、フェリーになるが、港は900台のトラックが列を作り、数日掛かるようである。また、ロシア政府はケルチ大橋の修理完了目標を来年7月と、当分使えないことになった。このケルチ大橋の修理は、中国の業者が請負うようである。

バクムット方面・その他

ロ軍の精鋭部隊が少なくなり、バクムット周辺に攻撃を絞るしかないようであり、突撃の人海戦術の攻撃になったが、ロ軍は前進できないようだ。このため、ドネツク方面の精鋭部隊をバクムット攻撃に充当し、動員兵で守りを固めるようだ。

このバクムット攻撃ではTOS-1のサーモバリック弾を市内に打ち込んでいる。このため、徐々にウ軍が押されているようだ。

また、14日以降、ベルゴロド州にあるロシア国家親衛隊の軍事基地や変電所、石油貯蔵施設で爆発が発生した。ウ軍のミサイル攻撃だと思われる。

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ロ軍の状況

ロ軍の人的被害が、ロシア機関からの情報で9万人以上と出てきた。戦死者と行方不明者、戦線復帰できない負傷人員の合計値であるが、ウ軍発表のロ軍戦死者6万人との関係が分からない。

普通は戦死者の2倍以上の負傷兵がいるということになると、戦死者3万人、負傷兵6万人となり、ウ軍発表と合わない。

このように人的被害が大きく、兵士が足りないために、ロ警察は手当たり次第でショッピングモールや地下鉄の駅などで動員の対象になる男性に召喚状を渡しているとか、モスクワ市内のホテルに宿泊していた18歳から55歳までの男性客40人を軍の徴兵事務所に連行したとか、サンクトペテルブルクでは、ぜんそく患者の男性が治療のために総合病院で診療を予約したところ、医師から召喚状を渡されるなどの事例が続出している。ノルマ達成に軍や警察は躍起になっているようだ。

このように、ロ軍が動員を急ぐ理由は、戦局が不利に傾き、それを挽回する手が動員しかないからだろう。すでに南部ヘルソンで、ロ軍の動員兵が500人ほど戦死したとウ軍は述べているし、東部では5人の戦死をロシアの報道機関は報道している。ロシアの軍事ブロガーも動員兵の訓練不足を問題視している。

そして、ベルゴロド州のソロチのロ軍演習場で15日、乱射事件があり、ロ国防省によると11人が死亡、15人が負傷したが、動員兵3名が突然発砲した。近々、激戦地に送られることに反対していたようで、短期の訓練で前線に送られることに不安が高まっている。

このため、ロシアはベラルーシ軍の基地を動員兵の訓練に使うようであり、教官もベラルーシ軍人になるようだ。ロ軍軍人は欠乏しているが、ベラルーシ軍軍人がいるということである。

このようにロ軍弱体化で、前線の維持は徐々に難しくなってきて、ベラルーシを活用する方向のようだ。ベラルーシも、戦闘に参加するより、ロ軍の後方支援の方が良いということのようだ。

そして、ベラルーシも、公式には動員を行わないと発表したが、非公然動員を開始するようだ。特に運転手と料理員が対象のようであり、ロ軍の兵站要員が不足しているので、ベラルーシが要員を送り込むようである。

それと、ベ軍とロ軍の合同軍も創設した。この合同軍は、ウクライナ国境近くに配備したが、ウクライナへ侵攻できるのであろうか?ウ軍は準備万端である。

北朝鮮は、工兵を中心に10万人を東部ロシア占領地域に送り、復興作業を行う予定であるが、この工兵の逃亡が多発しているという。東部地域は、いつ戦場になるかも分からない地域であり、戦闘要員として駆り出される可能性が強いためであろう。

そして、イラン革命防衛隊がロ軍に、複数のイラン製ドローンの使い方を教えているが、ロ軍は自国オルラン10ドローンの製造ができずに、ドローンをイランから導入して、攻撃している。

日本の斉藤製作所のエンジンが直接輸入できずに、数が作れないようである。

イラン国内では、自由を求める国民の声が強くなり、デモが盛大に行われている。体制変更もあるのではないかとも言われている。裏には米英のカネが動いているようにも感じる。ロ軍への支援を止める必要があるからだ。

そして、T-62戦車を800両を近代化改修して、前線に送るという。また、ベラルーシからも大量の戦車・装甲車がロシアに送られたという。このように、装甲車と戦車が不足して、1960年代の戦車を倉庫から持ち出して使うようである。T-90、T-80、T-64の戦車は既に使い切り、残すはT-62戦車以前のものしかないということである。

ロ軍前線司令官は、弾薬不足と戦車などの兵器不足があり、まともに戦えない状態であることを知っていると英国諜報機関がいう。このため、大規模攻撃もできずに、ウ軍の攻撃を防御するだけになってきている。

とうとう、国内でも、ロ軍の惨敗を批判していたロシアの軍事ブロガーが、警察につかまり始めて、そこからの情報を得ることができなくなってきた。国内でもプーチンの味方がどんどん少なくなっている。国内でも恐怖政治になり、正常な批判を許さない政治に移行するようだ。

一方、ウ軍は、どんどん兵器と弾薬が欧米諸国から送られてきて、かつロシアの戦車や装甲車や弾薬を鹵獲するので、装備が良くなっている。

ウ軍の優位な状態が、確実になってきたことになる。もう1つが、この戦争で世界全体が戦争時代に逆戻りした観がある。どんどん、戦争の影響が広がっている。

そして、米国の中国への半導体輸出規制は大きい。米中間の対立も拡大している。イヤな感じになってきた。

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ロシアの孤立化と行き詰まり

国連総会(193カ国)でのロシアのウクライナ4州の併合に対する非難決議は、日米など143カ国が賛成で採択した。反対はロシア、北朝鮮、ベラルーシ、シリア、ニカラグアの5カ国にとどまり、中国やインドなど35カ国が棄権で、残りは投票に参加しなかった。

このように、ロシアへの非難が多く、インドや中国も棄権したようにロシアに賛成する国は少ない。今まで、ロシアを非難しなかったイスラエルも、この件では非難し始めた。

このため、プーチンは危機感から、国際会議を多数開催して、ロシアの孤立化を防ごうとしている。14日も、カザフスタンの首都アスタナで、旧ソ連諸国で構成される独立国家共同体(CIS)の首脳会議に出席したが、この中でロシア非難決議に反対したのは、ベラルーシしかいない。モルドバは賛成で、後は、棄権と投票に参加せずである。この会議では、カザフスタンのトカエフ大統領から「国境問題は、平和的手段で解決するべきだ」と述べられて、苦い顔をした。

また、タジキスタンのラフモン大統領は、プーチンに対し「旧ソ連時代のように中央アジア諸国を扱わないでほしい」と述べ、属国扱いではない対等な関係を望んでいるとした。このようことを言われるのは、ロシアの立場が弱くなっている表れだ。

プーチンは、核攻撃を仄めかしていたが、NATOと米国は、戦術核でウクライナを攻撃したら、NATO軍がロ軍を全滅的攻撃すると宣言されて、それは脅しではなく、確実に実行するとした。そして、それをプーチンにも伝えているという。

このため、プーチンも核使用を述べなくなっている。

停戦は

ラブロフ外相が「核はロシアの存亡の危機にしか使わないし、首脳会談の提案があれば、応じる」と述べたが、トルコのエルドアン大統領がアスタナで、プーチンと首脳会談を開いたが、停戦の話はなかったという。

エルドアン大統領は、事前にウクライナのゼレンスキー大統領と話をしたが、プーチンとは交渉しないと言われて、停戦の話もできなかったようである。

このため、米バイデン大統領も、今はプーチンと首脳会談をする気がないとしたし、プーチンもないとした。まだ、プーチンはロ軍を立て直すために、時間が必要であることを知っている。このため、停戦で時間を稼ぐ必要がある。

しかし、プーチンの思惑を読んで、ウクライナは停戦しない。停戦するのは、ロ軍がウクライナ領土から完全撤退した時であり、プーチンとは、それ以外での停戦はないという。

これにより、立て直しができず、ロシアが再起不能になるまで、戦争は続くことになる。しかし、この最終的に追い込まれた段階で戦術核を使用する可能性はある。

ということで、中国政府は、ウクライナの自国民に対し出国を要請したが、核ミサイル攻撃を想定した可能性もある。

それより前で停戦協議を始めてもらいたいと思う。そうしないと、核戦争になり、少なくとも、ロシアは、ロシア人もろとも完全崩壊する。一方、欧州・日本なども核攻撃される。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2022年10月17日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Andranik Ghazaryan / Shutterstock.com

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